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日付が変わる前後に布団に包まり、昼過ぎまで寝入る、風を部屋の中に取り込みながら寝ていて、人々の活動の音で目が覚める、足が早まって安売りされていた果物とパン、インターネットの情報を摂取する、昼寝をして、夕方過ぎまで眠る、意識は洗いたてのようにさっぱりして、真新しくて、新鮮。
初夏の夜は日が高い。19時の空は黄昏を残した群青の層になって、雲は、流れていく意識のよう。木のさざめく音や、葉の影が揺れる様子、川の流れる水音、川面を光ってちらつく夕方の面影、5月の風。
歩きながらいろいろ考えていて、全部忘れてしまった。
なにも考えないことについて考えていた。
意識や思考を放棄する方法とそのこつについて。
意識を外側に向ける。
内側が外側になる。
内と外が一体になる。
視界を通して見るもの、鼓膜を通して聞くもの、鼻腔を通して香るもの、皮膚を通して触るもの、それらに焦点を絞る。
思考に絞った焦点をぼやけさせる。
感覚が明瞭になる。