ダンデライオン・イン・ウィンター
賃貸から歩いてすぐの場所に河川敷がある。
犬と散歩している人やジョギンガーやチャリのおばちゃんや老人や学生とすれ違う。
人が住んでる。
僕もこの街に住んでる。
もううんと寒くなって少し立ち止まると指先が冷凍される、氷みたいに。
かろうじて電線から自由な空が空の速さで移動していくのをただ見ている。
空は移動してるんじゃなくて流れて漂ってそこにある。
僕は、自分は空だと思った。空のままでいたいと思った。でも無理だった。僕は空じゃないからだった。
本当に?
まだ生きてる。まだ生きてる人が吸った空気を歌にして吐いてる。被虐的感傷を諦念的焦燥で歌ってる。のを聴いてる。シナプスが全部それにつながろうと騒いでざわめいて暴れる。
感覚はつながったわけじゃなくてコピーされたんだ。
僕は模造。
僕は模様。
君と君と君の複製。
なんつって。
僕は君に気の利いた言葉をかけない。僕は君に感情移入しない。